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2014年01月20日

上れない魚道

 
中日新聞 2014年1月20日
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2014012002000003.html

上れない魚道、全国に 管理されず土砂が堆積

 えん堤などに設置してある魚道が壊れたり、土砂が詰まったりし、魚が上れず機能していない事例が全国で相次いでいる。岐阜県では主な魚道の四割、高知県では九割で遡上(そじょう)できていないことが各県の調査で判明。魚道が環境に合っていなかったり、造りっぱなしで維持管理が十分にされていなかったりするのが原因とみられる。岐阜県では行政と市民が協力して点検に乗り出すなど改善に向けた動きも出てきた。

 入り口と出口は土砂でふさがり、水路に水は流れていなかった。岐阜県郡上市を流れる長良川の支流・吉田川上流に設置された天竜砂防えん堤(落差約十メートル)の魚道。幅一・五メートル、全長約百二十メートルの巨大なコンクリート製の折り返し型水路を魚が上る構造だが、水流を弱める隔壁も一部が崩れていた。

 この魚道は国の「魚がのぼりやすい川づくり推進モデル事業」の一環で、県が一億五千五百万円をかけて一九九六年度に設置した。一帯はアユの漁場で、サツキマスの産卵場もある。

 県が二〇一二年度に全県の主な魚道六百七十三カ所(国管理分を除く)を点検した結果、このような「上れない魚道」が41%(二百七十三カ所)に上った。

 原因の多くは土砂の堆積で、魚道の出入り口や内部がふさがった。損壊した魚道や、河床がえぐれて低下し水面よりも高い位置に入り口がある魚道もあった。県河川課の担当者は「川の巡視点検はするが、護岸や堤防が中心。魚道まで十分に見られない」と言う。

 清流・四万十川の流れる高知県が昨年まとめた調査でも主な河川の魚道約七十カ所の九割、北海道では約三百カ所の二割が同じような理由で、魚の遡上が不可能か困難だった。

      ◇

 水産資源保護法は砂防えん堤や農業用水、発電用ダムなど河川に設置する堰(せき)の所有者らに「魚類のさく上(遡上)を妨げないように、その工作物を管理しなければならない」と規定。魚道は堰を管理する自治体や農業団体、発電事業者らが設置している。

 魚道問題に詳しい「たかはし河川生物調査事務所」(高知県香南市)代表の高橋勇夫さん(56)によると、日本の魚道は、大河がゆったりと流れる欧米で開発されたモデルをそのまま導入したものが多い。急勾配で、土砂の質や魚の種類も異なる日本には合わないのに「十分な検討もされずに設置されてきた」と言う。

 また、設置後の評価や維持管理が、ほとんどされていない。岐阜県の調査では八割が設置年度も不明。高知県では農業用の取水堰の周辺が耕作放棄地になったまま、放置されていたケースもあった。

 一方、生物多様性などの環境意識の高まりや砂防えん堤に多額の税金が使われていることもあり、少しずつ変化が表れている。

 岐阜県は魚道の調査後、五年間で二億五千万円をかけ、県管理分の魚道の土砂を撤去し、破損を改修する。魚道を点検する簡易なカルテも作成。昨年から漁協や建設会社、釣り愛好家ら公募で集まったボランティア約百十人を「フィッシュウェイ・サポーター」に任命し、県とともにカルテを使って年一回以上、点検してもらっている。カルテは台帳として管理。観察を続け、その環境に適した魚道への改修につなげる。

 サポーターの一人で、郡上漁協理事の金子智孝さん(72)は自宅横の吉田川を担当。「行政だけでは気付かない川の変化を伝えられれば」と話す。

 土砂がたまりにくく、日本の川に多い小型の魚や底部に生息する魚にも対応した新たな魚道も複数開発され、一二年度に導入した多摩川の二ケ領上河原堰(東京都調布市)は、遡上する魚の種類が大幅に増えた。

 岐阜経済大の森誠一教授(魚類生態学)は「地域の人が魚道を意識することで魚の目線で自然を考え、川に目を向けるきっかけにもなる」と話す。


■二ヶ領宿河原堰の魚道

上れない魚道


上れない魚道


 江戸時代から使われていた堰で、昭和24年に改修前の固定堰になりました。昭和49年の狛江水害の経験から、洪水を安全に流す全面可動式に改める改築工事が平成11年3月に完成しました。河道を拡幅することで魚道線形を魚が通り易い直線状にし、魚道下流側の護床工を深く溝状にすることで渇水時も魚の通行を確保し、副ダムを設けて魚が堰ゲートを落下する際の降下魚の衝撃を和らげるとともに溯上魚を魚道以外に誤進入させないなど、数々の新工夫を施しました。左岸には緩勾配水路式、右岸側にはこれにアイスハーバー型も付設されています。地下監査廊を設けることで旧堰のデザインをできるだけ踏襲し、化石を産する下流側の土丹層を守るために改築位置を変更するなど、地域の方々の意向も取り入れました。












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