「造園修景」No.119 より
特集 「造園界の今後のあり方」
(一般社団法人)日本公園緑地協会 顧問 山田勝巳氏
1.はじめに
経済のゼロ成長時代を経由して世界は成熟期の段階に入り、文明の大きな転換期にいる。
多様な価値観、交流と連携、社会貢献、グローバリゼーションという社会意識の転換によりヒエラルキーな社会構造からフラットな社会構造に変わりつつある。タテ社会からヨコ社会へ移行していく。
人々の生きがいと価値観は、物から、人・サービスーへ、また人を感動させ、幸せにする社会、人と人との交流、連携、絆であり、社会への貢献に変化していく。
2.自然と人間の共生
公害対策で「経済と自然との調和」、花博では「人と自然の共生」、愛知博では「愛・地球博-自然の叡智-」へと変遷した。
自然と人間の関わりは経済優先から「人間のための自然」にまで深化した。
緑の社会資本は一定の水準にまで引き上げられ今後は、再生やメインテナンスに重点が置かれていく時代になっていく。大震災の復旧・復興、原発事故、デフレ経済など多難な時期に今後の造園界を見つめると先行きの見通しは難しいが、世の中の新しい動き、新しい需要に向かって、造園家が総力をあげて結集し未来を切り開いてゆく機運を作り出していくことが大切であり、時には思い切った発想の転換も必要であろう。
(1)造園の目指すものは
造園は技術の範疇にあり、技術は科学によって得られた客観的な自然的法則の人間社会の実践のための意識的適用である。
したがって「造園は生物社会を構成する生態系という自然を保護、保全、改変、創出し良好な人間環境を創り出す技術である」ということになる。
里山の人々と縁との関わり方が良好な人間環境を創り出してきた、といわれるが現状は相当厳しい。
街路樹も同様で、定期的な勢定により樹形の美しさが保たれるが、これを怠るとしばしば近隣住民とトラブルにになり管理者、住民、造園家が話し合い、解決していく事例が見られる。ホノルル市では市内の樹木や緑被地をアーバン・フォレスト(都市林)として捉え24時間体制で市が管理にあたり、最良の景観地区を保っている。
(2)造園家と造園界の今後は
造園家と造園界の役割と使命は人間に快適で感動を呼び、人を幸せにする自然と環境をいかに世の中に提供するかにある。公園緑地は人々に日常生活の中で健康、運動、福祉、観光・レクレーション、教育といった様々なサービスを提供できる施設であり、人々の生活に関わる自然や、環境には公園緑地という施設の単一機能だけでなく、広域の自然や、環境が保有する景観、生態系、地球環境、生物多様性、安全・安心な街づくりといった、総合的、複合的な役割を担っている。
各種の専門家、住民、行政、首長を交え、現況把握、構想・計画、施工、管理運営まで幅広く、説明し、賛同を得て、問題の解決、計画の実現、管理運営の手法、改善などに役立っていくことが必要で、このためのノーハウ、仕組みについて新しい技術や考え方を駆使して、新たな価値、システムを生み出し社会を、大きく変える変革を起こすことが求められているのでは。
3.社会や利用者のニーズあった公園緑地
(1)時代とともに変化するニーズ
公園緑地に対する社会のニーズは時代とともに大きく変遷していく。これに絶えず即応していかないと社会から無用のもの、無駄使いと言われかねない。次に具体の施策との関連を見ていくと
① 歴史まちづくり・緑地保全
緩やかな規制で緑地保全の効果を上げ、管理も可能になっている。管理の指定団体の充実やNPOの組織化が急がれる。
歴史まちづくりは全国の市町村が望んでいた仕組みで今後の推進が期待されるが、これはまさに造園専門家が関係者をコラボレートして進めていく題材であろう。
横浜市が緑地保全の財源として市民から一定期間の特別徴収に踏み切ったのは英断といえる。
② 街区公園
公園の遊具による事故が頻発し安全基準が業界独自でも見直し改定され、その後の事故防止に貢献している。
遊具の老朽化対策や効率的投資を目的に公園施設長寿命化計画が策定され街区公園がリフレッシュされ子供と母親の人気を集めている。全国的に進めてもらいたい施策である。
③ 防災公園
東日本大震災による津波で重要性が確認された公園緑地の機能に、多重防御の一つとしての機能がある。多重防御には樹林地による津波エネルギ