今
「浜松市環境教育推進プラン(案)」のパブコメを募集している。この推進プランの対象が子供だけでなくて広く全年齢を対象にしているので、どうもこの「環境教育」という言葉がしっくりこない。やっぱり「環境学習」だと思う。生涯学習はあっても生涯教育はないし・・・。ま 基づくホーリツが
「環境教育などによる環境保全の取組の促進に関する法律」(略して:環境教育等促進法)なので生姜ない訳だけど。
手元に20年くらい前の「環境教育指導資料(中学校・高等学校編)」があった。
某昆虫公園を計画した時に買ってみたもの。当時は文部省。このころ辺りから「環境教育」って言葉が使われ出したのかなあ。資料として触りの部分をOCRでデータ化してみた。
====以下OCR 誤変換有り
MESC1-9102
「『環境教育指導資料(中学校・高等学校編)』文部省 平成3年6月5日初版発行定価400円(本体388円・税12円)」より
まえがき
地球の温暖化、オゾン層の破壊、熱帯林の減少などの地球的規模の環境問題や都市化、生活様式の変化に伴うごみの増加、水質汚濁、大気汚染などの都市・生活型公害問題は、現在一世界各国共通の課題となっており、その解決に向けて世界各国が取り組んでいるところである。我が国においても、平成元年5月に地球環境保全に関する関係閣僚会議が設置され、関係省庁は相互に緊密な連携を図って、地球環境保全を進めるための施策を推進することとされている。
学校教育においては、従来から、その重要性にかんがみ、小学校、中学校及び高等学校の主として社会科、理科や保健体育の教科等の指導の中で、児童生徒の発達段階に応じて環境に関する学習が行われているところであるが、平成元年3月の学習指導要領の改訂においては、更にその指導内容を充実したところである。各学校においては、この趣旨を理解し、今後、いわゆる環境教育の充実を一層図っていくことが望まれる。
本書は、新学習指導要領の実施に向けて、学校における環境教育の意義と役割、新学習指導要領における環境教育にかかわる内容等を解説するととも.に参考となる指導の実践例を掲載し、中学校及び高等学校における環境教育の推進に資することを目的として作成したものである。
各学校においては、本書を参考として環境教育についての理解を深め、創意工夫を生かして取り組んでいくことを期待するものである。終わりに、本書の作成に当たって終始熱心に御協力いただいた各位に対し、心から感謝の意を表する次第である。
平成3年3月
文部省初等中等教育局長 菱村幸彦
第1章 第1節
2 環境とは
ここで「環境」という言葉の意味について考えてみよう。環境という日本語は明治中期以降広く使われるようになったが、外国での使用例は古く、①生物や人間のまわりの一切の事物、または②生物や人間の生活に関与する諸条件の2通りに用いられてきた。①は外界であり、ここでは②の意味で環境を考えていきたい。
環境は、自然環境と社会環境(文化環境、歴史環境、精神環境などに分けることもある。)に大別することもできるが、むしろ、自然環境と社会環境を含めた総合的な事象として理解すべきであろう。
ただし、学校教育において環境を取り扱う際には、教科等によりおのずと重点の置き方が変わることは当然であろう。
3 環境問題
環境の変化をもたらすものとしては、自然の変化が原因となるものと、人間活動によるものとがある。
環境保全の立場からみて、こうした環境変化の中には、将来、環境悪化の方向に向かうのか、それとも環境改善の方向に向かうのか、現段階では推測の困難なものも多い。それは、環境影響の予測と評価に関する我々の知識がまだまだ不十分だからである。
例えば、固体地球、その表面を覆っている水圏、その両方を取り巻く気圏及びそれらの間に存在する生物圏とそれらの相互作用について、いまだ解明されていない現象が数多く残されている。
環境変化の行方を見定めるには、こうした未解決の現象を速やかに解明し、知識を集積し、総合することが必要である。このため、地球及び地球環境そのものについて学術的な面での研究を一層推進する-ことが、国内的にも国際的にも緊急の課題となってい′る。
これに対し、人間活動による環境汚染は、速やかにその汚染の原因を除去したり、積極的に環境保全に配慮した社会経済構造を形成していく必要がある。現在、環境悪化及び環境汚染として、我が国をはじめとして世界各国が問題にし、早急にその対策を講ずるべきであるとしている問題を例示すると次のようなものがある。
第2節 環境教育の意義と役割
1 環境教育の必要性
豊かで便利な生活を追い求めて、我々は今日の生活様式を作りあげてきた。その便利さや豊かさを当たり前のように感じて、更に便利さや豊かさを享受しようとしている。しかし、こうした消費生活が生活排水による水質汚濁、近隣騒音問題、ごみ処理問題、自動車公害など都市・生活型公害や自然環境の破壊を引き起こす原因となっている。さらに、宿発な生産活動や豊かな消費生活は地球上の多くの貴重な資源やエネルギーを消費し、多くの不要物や汚染物の排出によって環境に多大な負荷を与えている。二酸化炭素の増加等による地球温暖化、フロンガス等によるオゾン層の破壊、熱帯林の減少、酸性雨等の地球環境問題は我々の日常生活に深く起因している。
このような環境問題に対して緊急に対処しなければならないという認識とともに、都市化の進展に伴う身近な緑の摘果により、豊かな自然や良好な環境との触れ合いによる潤いとやすらぎの確保への欲求や、快適な環境の保全や創造を求める声が高まっできている。
これらのことに対処していくためには、我々一人一人が人間と環境とのかかわりについて理解と認識を深め、豊かな自然や快適な環境の価値についての認識を高め、環境に配慮した生活や責任ある行動をとるとともに、環境問題を引き起こしている社会経済の背景や仕組みを知り、その構造を環境に配慮したもの-と変革していく努力が求められている。
そのためには、まず、環境に対する豊かな感受性や見識をもつ人づくりこそ環境問題解決の確実な方法と言え、いわゆる環境教育の推進が必要である。ここで環境教育とは、『環境や環境問題に関心'知識をもち、人間活動と環境とのかかわりについての総合的な理解と認識の上にたって、環境の保全に配慮した望ましい働き掛けのできる技能や思考力、判断力を身に付け、より良い環境の創造活動に主体的に参加し環境-の責任ある行動がとれる態度を育成する』ことと考えることができよう。
2 環境教育の目的
環境教育は自然保護教育が始まりと言える。欧米諸国では19世紀後半から組織的な自然保護教育の展開が行われていたが、環境教育として本格的な取組みが始まったのは、第2次世界大戟後の急速な経済発展がもたらした環境破壊に対する危機意識の高まりによる。イギリスにおいては、1967年(昭和42年)の初等教育に関するプラウデン報告書が学校教育における環境の活用を唱え、アメリカ合衆国においては、1970年(昭和45年)に環境教育法(注8)が制定されたのが、教育界における環境教育の本格的な取組みと言える。
環境教育とは「人間を取り巻く自然及び人為的環境と人間との関係を取り上げ、その中で人口、汚染、資源の配分と枯渇、自然保護、運輸、技術、都市と田舎の開発計画が、人間環境に対してどのようなかかわりをもつかを理解させる教育のプロセスである」(アメリカ合衆国環境教育法)とあるように、単なる自然を保護するためだけの教育ではない。
1972年(昭和47年)、ストックホルムで開催された国際連合人間環境会議は、環境教育の国際的広がりのきっかけとなった会議である。環境問題が人類の生存にかかわる重大な共通課題として認識され、「環境教育の目的は、自己を取り巻く環境を自己のできる範囲内で管理し、規制する行動を、一歩ずつ確実にすることのできる人間を育成することにある」という理念が打ち出された。これを踏まえて、1975年(昭和50年)にベオグラードで開催された国際環境教育会議で、環境教育のねらいを明確にしたベオグラード憲章が採択された。この憲章では、個人及び社会集団が具体的に身に付け、実際に行動を起こすために必要な目標として関心、知識、態度、技能、評価能力、参加の6項目を示しており、環境教育の準拠すべき枠組みと言えよう。具体的には、
① 関心:全環境とそれにかかわる問題に対する関心と感受性を身に付けること。
② 知識:全環境とそれにかかわる問題及び人間の環境に対する厳しい責任や使命につ
いての基本的な理解を身に付けること。
③ 態度:社会的価値や環境に対する強い感受性、環境の保護と改善に積極的に参加す
る意欲などを身に付けること。
④ 技能:環境問題を解決するための技能を身に付けること。
⑤ 評価能力:環境状況の測定や教育のプログラムを生態学的・政治的・経済的・社会
的・美的、その他の教育的見地にたって評価できること。
⑥ 参加:環境問題を解決するための行動を確実にするために、環境問題に関する責任
と事態の緊急性についての認識を深めること。
となっている。
1982年(昭和57年)のナイロビ宣言においては、「広報、教育及び訓練を通じての環境の重要性に対する一般的及び政治的認識を高めること」とされ、1987年(昭和62年)の環境と開発に関する世界委月会においては、環境教育は「あらゆるレベルの公式の教育カリキュラムの中に位置付けること」「成人教育、仕事上の研修、テレビあるいは非公式的な方式による広範囲の人々-の普及」が緊要であることとされた。さらに、アメリカ合衆国の「環境教育の推進等のための法律」(1990年(平成2年)の制定)など、環境教育推進は一層大きな動きとなってきていると言えよう。
3 環境教育の基本的な考え方
環境教育を考える際の視点は、次のようになるであろう。
(1)環境教育の目的は、環境問題に関心をもち、環境に対する人間の責任と役割を理解し、環境保全に参加する態度及び環境問題解決のための能力を育成することにあると考えられるので、環境教育は家庭、学校、地域それぞれにおいて行われなければならない。
(2)環境教育は、幼児から高齢者までのあらゆる年齢層に対してそれぞれの段階に応じて体系的に行われなければならない。特に、次の世代を担う幼児児童生徒については、人間と環境のかかわりについての関心と理解を深めるための自然体験と生活体験などの積み重ねが重要である。幼児期、児童期においては、自然との触れ合いの機会を多くも、たせ、子供のみずみずしい感受性を刺激し、様々な発見の中から好奇心を育て、創造力育成の基礎をつくることが必要であろう。そして発達に伴って、子供の関心と生活体験を軸にして、問題解決のための課題や方法を兄いだす能力を育て、環境の改善や保全、創造に主体的に働き掛ける態度や参加のための行動力を育てていくことが必要である。
(3)環境教育は、知識の習得だけにとどまらず、技能の習得や態度の育成をも目指すものであり、科学に根ざした総合的、相互関連的なアプローチが必要である。さらに、生涯学習として学校教育と家庭教育、社会教育の連携の中で継続して展開されなければならない。
(4)環境教育は、消費者教育の視点も併せもつものである。日常生活は様々な商品を消質することで成り立っている。それらの商品は、生産、流通、消費というプロセスを経て廃棄されており、それらの各過程において不要物や汚染物を出して、環境に負荷を与えている。したがって、環境保全に対して人間が責任を果たすためには、生産過程においては環境への負荷の高い物質を他のものに変えることや使い捨て製品及び有害物質を含む製品を作らないこと、流通過程においては省資源、省エネルギーを進め、再使用・再利用を図ること、消費過程においては環境にやさしい商品の購入、リサイクル活動など、環境保全を目指す循環型社会システムを形成していく必要がある。消費者には環境にやさしい生活様式に根ざした商品選択や意志決定能力を育成していくことが必要である。
(5)環境教育は、地域の実態に対応した課題からの取組みが重要である。都市・生活型公害や自然環境の破壊の状況は地域によって異なるものであるから、地域の特性など身近な問題に目を向けた教育や学習の内容で構成し、身近な活動から始めることが必要であろう。さらに、身近な環境問題が究極的には地球環境問題につながっていることが認識でき、地球環境を配慮した問題解決の意欲、態度、行動力を育てていかなければならない。“Think Globally, Act locally”すなわち「地球規模で考え、足元から行動する」ことが現在求められているのである。